2009年3月7日土曜日

人間は人間らしく

ふと見たテレビ画面の中で都市の大きな道路の真中で交通整理?みたいなものをしているロボットが映っていた。私は前からロボットに関心があったので一寸見ていると「もっとすごいものをお見せしましょう」と云ってアナウンサーをビルの中の部屋に案内する。
ドアを開けるとアナウンサーがびっくりして大声をあげた。
「石黒先生じゃありませんか!」
まったく同じ人間が二人、椅子にかけている。
アナウンサーもどちらが本物かすぐに分からない。
顔に触って体に触ってやっと分かった。「顔は何で作ったんですか?」というアナウンサーの問いに「シリコンです」と答えた。こんな人間そっくりの物が作れるまでにロボット産業は進んでいるんだなと私は嬉しいような怖いような気分になった。
石黒阪大教授のジェミノイド(コピーロボット)だそうだ。

それから私は考えた。
書店では無理かな?あまりに多品種すぎてインプットするのにコストがかかりすぎて高価なロボットになってしまいそう。例えば小綺麗で小さなレストランなど、どうだろうか?
10品以内の品種ならば出来そうな気がしてきた。
一寸試しにやってみましょう

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しゃれた小さなレストランに客が入ってくる。
可愛いエプロンをかけたロボットちゃんが「イラッシャイマセ」と先ず可愛い声を出す。
お客様は一寸ビックリしながら席に着く。
ロボットちゃんがやってくる。手にはメニューを持って。
「イラッシャイマセ。コチラメニューデゴザイマス。ドウゾオエラビクダサイ」
お客様は又びっくりしながらメニューの中からAとBを選ぶ。
「これとこれにします」と云うと「ハイ、ワカリマシタ。AトBデスネ。ショウショウオマチクダサイ」と云いながらAとBを大きな指で押える。メニューに印がつく。そのメニューをロボットちゃんは調理場へ持って行く。
そして「AトBオネガイシマス。3バンテーブルデス」と告げる。しばらく待つとやがてロボットちゃんはトレーにAとBをのせて運んでくる。
3番席へ着くと頭をチョコンと下げて「オマタセイタシマシタ。AとBオモチイタシマシタ。ドウゾゴユックリオメシアガリクダサイ」と云って大きな手で料理をテーブルに並べる。お勘定書は可愛いガラス瓶の中へ差し込む。客は又又ビックリ。料理が美味しくて気に入ったらきっと近いうちに又来ようと思うだろう。食べ終り客が立ち上がるとロボットちゃんは「アリガトウゴザイマシタ。オアジハイカガデシタカ?マタオイデクダサイネ」と云って大きな手を振る。ウエイトレスは不要ですね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は本屋なので買っていただいたお客様、その日は買われなかったお客様にも「雨の中お越しいただきまして有難うございます」とか、「先日のお孫さんへのプレゼント喜んで頂けましたか?」とか、「あの続き来月でますよ」とか「この著者のものは今旬ですね、読ませますね」とか、「こういう古典ものは若いうちに読むべきよ、貴方のような時代に読めば一生残るわよ」等とつい口から言葉が出てきます。
私がお喋りだからではなくお客様に「有難うございます」という心情が言葉になってしまうのです。

ところが私が客になって買い物に行った時、ついこの調子でお喋りをしてしまうと周囲の空気が一寸変になる時がある。特にチェーン展開している店の場合には金額と一言「ありがとうございます」と云うだけだという事がやっと分かった。品物を受け取り私は黙ってレジを離れる。帰りながら店が変ったなーといつも思う。無味乾燥になったなーと思う。これならロボットの方がコストに合えばずっと良いと思ってしまう。街がロボットだらけになるのは困るけど。
人間でなければ出来ない仕事がだんだん減ってゆくだろう。
これも便利、あれも便利と云ってるうちに人間の仕事が少しづつ少しづつ減ってゆきそうだ。

そんな時代になってもロボットでは出来ないことが必ずある。
それが人間の 知 と  だと思う。
知を磨き情を養ってゆく事が一番大切な時代がもうすぐ来ると私は思う。
そこに読書の喜びと大切さというものが浮かび上がってくる。
私は人間にしかできない仕事の出来る人のためにこれからも地道に本屋を続けてゆきたい。


-----------------------------------
イセザキ書房
〒231-0055 神奈川県横浜市中区末吉町1-23
TEL: 045-261-3308 FAX: 045-261-3309
www.isezaki-book.com
お問い合わせ・ご注文フォーム
にほんブログ村 本ブログ 出版社・書店へ

0 件のコメント: