2010年3月27日土曜日

文字を書こう 本を読もう

私の部屋は仏間と床の間にある四畳の部屋以外はすべてフローリング。
20坪余のいわばワンルーム。


寝室だけはドアーで仕切ってあるが20坪は玄関に入れば一目で見渡せる。ベランダ側の建具は二重ガラスにし、その内側はすべて障子にした。
フローリングに障子これはこの部屋を考えた時に是非したかった事であった。畳でなくても実にマッチする。障子は雪見障子にして下半分は開けても道路をはさんだ前のビルからは中は見えない。
ベランダの寄りかかりで視界は遮られている
ほとんど、休みはないに等しいか私がひまを見つけて季節の花を手早く部屋に生ける。二重ガラスで音は大部分遮断され障子からもれてくるやわらかい光の中で娘時代15年間花の師匠の叔母から受けた手ほどきで、どんな花でも形に出来るのが嬉しい。障子から入ってくるやわらかな光の中で花は優しく私に語りかけてくれる。

「今日はよく出来たね、さぁ仕事を頑張りなさい」

花道とか茶道、日本の文化である。みんな夫々の国に夫々の文化がある。
日本の文化の根源は分かり易く表現すれば文字そのものだと思う。
文字なくしては、どんなに素晴らしい事も表現し難い。
絵画や音楽もあるがなかなか難しい。
昔から 読み 書き そろばん(計算) と云われているように。寺小屋で教えていたのもこれであった。
特に歴史や文学となると文字表現が先ず一番。
私は生粋の昭和人だけど平成人(昭和40年頃以後に生まれた人)になってくるとお世辞にも字が上手だとか正確だとか云えない人が多くなってしまった。
私達の大切な文化は必ず継承し開花させねばならないのに。とても残念に思う。

文字をあまり書かなくても生きて行ける時代になったためだろうか。
それとも字を習う、覚えるという教育が不足しているのだろうか。

パソコンで打てばみんな同じに出来る。
上手も下手もない。文章にはサンプルがあったりして。
恵まれすぎて少し甘えが出てきたのだろうか。

昭和人は「文字は人格を表わす」と教えられた。
鉛筆からボールペン、そして万年筆へ。
更に筆で書くという所まで進むのが普通だと考えていた。
奇麗な字で書かれた手紙を貰うと誰だって嬉しい。

携帯やネットもいい所がある。
それはそれで便利さを享受すれば良い。
しかし文化は文化として残さねば国がなくなります。

電子ブックが出てきました。
これは、これからの事です。私達の扱い方次第で大げさな表現をすれば日本文化が残るかどうかにかかります。

私は紙芝居から始まる日本語を大切にし読書は一枚一枚、頁をめくりながら読んでゆきたいと強く強く思っています。

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今週のおすすめ















「通の丼 今日から、あなたも丼名人!」
生活実用シリーズ 男の腕まくり

出版社名 日本放送出版協会
税込価格 1,000円
















「絶品!鍋 今夜から、あなたも“名”鍋奉行」
生活実用シリーズ 男の腕まくり

出版社名 日本放送出版協会
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2010年3月20日土曜日

命を大切にするという事は?

”嫁入り”という言葉を知っていますか?
50歳以上の人なら言葉としては知っていると思います。
結婚する・・・・ではなく”嫁入り”するのです。
戦前は普通の人は家と家とのつり合いで家に嫁として結婚していったのです。
「女」が「家」に嫁ぐ訳です。
婚家には夫の他に夫の両親、時にはその親族とか夫の姉妹兄弟もいたかも分かりません。

祖父母が亡くなっても姉妹達が他家へ嫁いでも両親とは同居する事になり、実家とは異なった生活様式を学びつつ婚家の嫁として一人前になってゆく訳です。やがて、自分の子供が適齢期になれば、嫁が姑になってその家の流儀(生活の仕方)を息子の妻に教えて行く訳です。この繰り返しの一家として成り立たせる為に様々な行事があります。
正月、盆は勿論日本には四季に応じて行事があります。
春にはひな祭り,端午の節句を初めとする五節句があり「立春」「立夏」「大暑」「立秋」「秋分」とかの二十四節気もあり、いずれも季節を基準にした農業に関係するものが多いのですが、農家でなくとも、その時期に合わせて食べ物をはじめとする生活様式が定められていました。ひとつの文化でもありました。しかしこれは、日本全国みな同じ形式ではなく少し離れたら正月の餅の形や雑煮の作り方も異なります。
実家の通りではなく婚家の様式の中に慣れてゆくわけです。子供も3~5人位いる家が多かったので大家族の中でもまれながら成長して行きました。又、祖父母がいる家は年寄りとはどういうものかという事を教わらずして身につけていたのです。

大家族の中で育った子供は元気があり祖父母と共に暮らす子供には教えられずして優しさは身についていました。
ところが、戦後 産業の上でも考え方の上でも核家族を余儀なくされ、結婚の形式が180度の変化をしました。家の持つ独特のスタイルはほとんど失くなってしまい、結婚の形は一変しました。
これが、いい事、悪い事というのではなく現象として生活スタイルの在り方を身を持って教えてくれる人がいなくなってしまいました。
特に冠婚葬祭、これはどこの家庭でも必ず起こる事ですが、着るものは。持っていくお金はいくらにするのか。咄嗟の事で困ってしまう事は多々あるのです。
御祝いの時の「のし袋」をふくさに包むにはどういう手順でやるべきか。
お喜びの金額。見舞いの金額、葬式の時の額それも誰彼に聞けるものでもない。
笑われてしまうかも分かりません。

ぴったり形式通りでなくてもよいが常識に合ったやり方をしようと思えば先生はもう 本 しかありません。本を読んで大体合わせてゆけば先ず間違いないと思います。
結婚をはじめとして様々な自由を手にした今はその自由の裏にある世の中の常識を身につけるには、”本”これしかありません。井戸端会議の中では得られません。

冠婚葬祭の本と限らず一般的に本の中には「人生いかに生くべきか」という内容が盛り込まれています。現代ほど読書を必要とする時はないと思います。
特別難解な本でなくても必ず 人たるべき姿 が盛り込まれています。
私がこの文章を書く動機になったのは下記の一冊です。
「楽しく遊ぶ学ぶせいかつの図鑑」
小学館の子ども図鑑プレNEO
流田直/監修


出版社名 小学館
税込価格 2,940円

子供用だと思ってひらいてみたらとんでもない。
これこそ今の世の中に役立つ一冊ですと私は自信を持ちました。
子供さんと一緒に読めば楽しいレクリェーションになると思います。

字を読むこと書くことになれましょう。
電子ブックになっても字を読まねばならない事は同じです。
頭の中で考えただけで、物(ロボット)が動くようになるというテレビを見ましたが、まだまだ先の事だろうしそうなった時にも文字なしには事は進みません。
親が沢山 本をもっている子供は小さい時から読書の習慣がついているし思いもかけぬ時に役に立ちます。総理大臣のお話の中に命を大切にするという言葉がよくでてまいりますがその基は読書です。鳩山総理、「命を大切にする為に本を読みなさい。そうすれば、なぜ命を大切にしなくてはいけないか分かります。」とおっしゃって下さい。

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今週のおすすめ













「タタド」
新潮文庫 こ-48-1
小池昌代/著

出版社名 新潮社
税込価格 380円













「暴力は親に向かう 
すれ違う親と子への処方箋」
二神能基/著


出版社名 新潮社
税込価格 580円













「世界ぐるっとほろ酔い紀行」
西川治/著

出版社名 新潮社
税込価格 620円

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2010年3月13日土曜日

昭和人と平成人

私は昭和8年生まれ。正真正銘の昭和人です。
こんな言葉、流行っている訳ではありません。
ある本を読んでいる時に、この言葉を発見しました。

新しいものや変わった事にすぐ飛びつく私は、これは一寸考えてみようと思い出したのです。
昭和31年(1956年)にイセザキ書房を開店してから私は一体何人の大学生に協力してもらった事か。
一寸数え切れないが大体2~3年は続けてくれる人が多かった。
入学してから卒業するまで4年間丸丸勤めてくれた人も10人は下らないと思う。
大学生というのはその時代の象徴みたいなものです。
昭和30年・40年代は大部分地方出身者が多かった。
又、二部の学生さんは昼は私の店で働き夜は大学へという健気な学生さんも何人かいた。

一口に大学生と云ってもその能力は様々である。
私も若かった時はほとんど年令の差がなくて弟か妹のような感覚でした。
私が年令を重ねるにつれて、息子や娘のようになり、今は孫世代と一緒にワイワイ騒ぎながら働いている。
教え方も相手に合わせてやっているが、今は店長が細々とした事は担当してくれるので私は店の方向を決める事と書店界の姿を見つめて業界人との付き合いに時間をとられている。

そして気がついた時には私は教える側ばかりでなく教わる事が非常に多くなった。
私は自分の知らない事を大学生のアルバイトさんや若い時代の人に教えてもらう喜びを味わっている。これは実に楽しい事です。そして嬉しい事です。
そして年代的に計算してみると昭和35~40年あたり以後生まれた人は私と感覚が異なっています。

ここだと思いました。

昭和人・平成人と云っても、どちらが悪くてどりらが良いかという意味ではありません。
生き方の違い、人生感の違いが非常に大きいのです。
具体的な現象については次回に譲りますが、皆さんも年令で友人や知人を観察してみて下さい。これを時代の進化というのか時代の流れと表現すべきでしょうか。
人間は時代の子(明治の人は強いね)この言葉若い時よく聞いた。
さて、昭和人は何と表現されるだろうか。

これもある雑誌の中の一説ですが念の為追加します。
「現代の政治家とか会社の社長という地位の人に弁説のうまい人というのが非常に少ない、ほとんどいない。これは本を読んでいない証拠です。本を読まねば言葉を覚えません。言葉を覚えなければ云いたい内容の適切な言葉が見つからないんです。弁説のうまい人は言葉の力とそれが理解出来ている人は話の 間 のとり方が分かっているんです。いませんね、聞きほれるような名演説家が」

私もそう思います。

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2010年3月6日土曜日

最敬礼の男

宮本明 が生まれたのは大正初期。ぼつぼつ戦争色が濃くなりつつあった頃だ。宮本家は一町歩そこそこの田んぼを持っている農家だあった。
長男の 登 は2才上だったが、元気が良いを通り越して年中近所から苦情が来る悪戯っ子であった。
夜中に近くの畠のスイカを割って一人で食べたり隣の家の柿の木に登って木の枝の所でパクパク柿の実を食べたり・・・・。手に負えないような男の子だった。
それに引きかえ弟の 明 は一度も口答えすらした事のないような、両親の云いつけもよく守り農作業の手伝いも2才上の兄よりずっとよく仕事をした。
近所の評判も良く小学校へあがってからも特別優秀ではなかったが宿題などはきちんとする子供だった。両親も弟の方がずっといい人間に育つと思っていた。

徴兵検査で兄は目が悪くて落された。弟の 明 は平均的に先ず先ずで合格してなぜか海軍の佐世保へ入隊した。
今までは何でも我がもの顔にふるまっていた兄、登はこの件ではかなりショックを受けたようだった。

弟が入隊する日「では行ってくるよ」と兄に云った。両親にはきちんと挨拶して出発した。
その時 母は「明の顔色が悪かった。何か怯えている」と云って心配して汽車の窓から首を突っ込んで「明よ。心配せんでええよ、着いたらすぐハガキ出すんだよ」と云って明 の両手をしっかり握り締めてやった。冷たい手であったと心配した。そして明 の両眼から涙がポロリと落ちた。
母はその姿が忘れられなかった。
待っていたハガキは来なかった。役所から無事入隊したという報せが届いて安心した。
兄のイタズラも成長するにつれおさまって来たものの両親の心配は絶えなかった。
日中戦争も長く続き物不足の時代に入りかかった。
農家であったので家族が食べる物には困らず表立った事もなく2年の時間が流れ去った。

そんなある日、軍の人から連絡があって「明君が体調を崩したので人をつけて帰宅させる」という知らせが入った。
両親は詳しい事は分からず、どこが悪いのか分からないけど好きだったバラずしを作って待っていた。
昼過ぎの汽車で軍服姿の 明がうなだれた様子で上司と共に帰ってきた。
上司の話によれば「軍令に従わず夜も昼もベットに入ったまま何を聞いても返事をしない」軍医の話では精神的に異常があるので実家で静養せよと云う事だ」と云ったまますぐ帰ってしまった。母は行きつけの医院へ連れて行ったが「これは神経科だから紹介状を書くから持って行くように」と云われハラハラしながら県庁所在地の総合病院へすぐ連れて行った。
何も言葉を交わさず、ただ黙ってついて来るだけの 明が母は不憫でたまらなかった。

神経科の医者の前に立って 明は最敬礼をして「まことにすみません」と小さな声で云う。医者は色々調べていたが、「一晩病院で泊まりましょう、お母さんもできれば一緒に」と云われ近所の 電話のある知り合いへ頼んで、その旨を夫に告げた。
その夜、何度も何度も起き上がり眠れない様子だった。医者が入ってくると最敬礼をして「すみません」と小声でいう。医者は首をひねっていた。

ほとんど眠らず夜が明けた。翌日医者は「何か余程大きな精神的ショックを受けているようだから暫く家族で優しくしてあげて下さい、それでも未だ心配だったら又来てください」母子は何も云わず又汽車に乗って帰って来た。
母が気づいた事は途中で大人の男性に会うと 最敬礼をして「すみません」と小声で云う事だった。

家に帰っても前のように畠仕事を手伝ってくれと云ってもまったく返事もしないし動こうともしない。そして何処へともなく外へ出てあちこち歩き回っている。
その時も大人の男性に会うと必ず最敬礼をしてすみませんと小声でいう。
村の人達も「やあ明君帰って来たの」と声をかけても返事をせず敬礼をして「すみません」と繰り返すばかり。そのうち村中の人の口から口へ明は頭が狂って帰って来たんだと云う様になった。

それから何ヶ月か経った時一通の封書が届いた。
住所も名前も知らない人だけど宛名は間違いなく 宮本明様 になっている。
母は恐る恐る手紙を読み始めた。

「宮本君、宮本君のご両親様 私は明君と同隊で2年近く生活を共にした友人です。明君はとてもいい同僚でした。優しくて思いやりもあって本当に立派な軍人になる人だと思っていました。 ところがある時靴のひもを無くしてしまい上官からこっ酷く叱られました。 何回も何回もぶん殴られて明君は座りこんで動かなくなってしまったのです。 天皇陛下から頂いた物を無くすとは何事だと側にいる者も怖くて見ていられませんでした。 この件があってから明君は人が変わった様に無口になり、食事もあまりとらなくなり、何をするのも動作が鈍くなりました。だから又失敗すると又殴られる、最敬礼をして詫び言を云わされる・・・・・・・・・・こんな事がとてもひどくなり僕達も明君が可哀想で何とか庇おうとしたんですが、そうすると又明君がぶん殴られるんです。そのうち僕達にも顔を合わせると最敬礼をして「すみません」と云う様になりました。これはおかしいと思って上司に報告いたしました。 その後の事についてはどうなったのか分かりません。明君が居なくなったのです。明君は実家におられますか?構わなければ伺わせて下さい。私も期間満了で帰宅しましたので、この手紙が書けたのです。遅れた事お許し下さい」と書いてあった。

母はすぐに、この手紙を神経科科の医者の所へ持って行った、
医者は「分かりました、暫く入院させましょう。すぐにでも連れて来て下さい」
この医者の言葉に母は本心ホッとした。
村中の噂になっている 明を病院へ入れてやった方が良いと心から思った。
明が病院に入って間もなく母は風邪がもとで肺炎にかかり3日後に亡くなった。
妻に死なれ、明の病気は治る気配もなく父も落ちこんでしまった。
その時、長男が父さん田んぼの土地へ借家を建て農業を始めようよと云いそれを具体化した。新しい家に入って間もなく父も病名不明のまま亡くなってしまった。
それから何日か経った頃、明の病院から連絡があり亡くなったと云って来た。
病院へ行って兄はひっくり返るほどビックリした。

明はベットの横で最敬礼の姿で亡くなったのだ。
医師が心の弱かった弟を抱き上げて背をのばしてベットにのせてくれた。
弟は何年間最敬礼をさせられていた事か。そしてその間両親はどれほど心を乱した事か。
こんな悲しい最敬礼を誰がさせたのか。
悲しい悲しい時代でした。
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今週のおすすめ本













「ヨシアキは戦争で生まれ戦争で死んだ」
面高直子/著

出版社名 講談社
税込価格 1,680円












「英雄なき島 硫黄島戦生き残り元海軍中尉の証言」
〔大曲覚/述〕 久山忍/著

出版社名 産経新聞出版
税込価格 1,680円













「未帰還兵(かえらざるひと) 
六十二年目の証言
産経新聞社の本」
将口泰浩/著

出版社名 産経新聞出版
税込価格 1,575円

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