海が好き。海辺で育ち、嫁としては横須賀でアメリカ海軍セーラーに本を売る商売につき横浜に移ってからも港町ヨコハマへ入港する外航船舶に厚生費としての本を売る事になった。
今は世界の海を航海する日本船乗組員の皆様に買っていただいた本を世界中の海の港へ毎日毎日発送しているイセザキ書房。
私は75年間海と共に生きて来た。
海と緑が切れた事は無かった。
海よ、海よ、おお海よ。
十年近くなるだろうか。
私は毎週日曜日に朝、開店前にうちから昔のセンターピア(今は新港一丁目)の海際まで往復するウォーキングを始めた。
今朝、私の店の時計が8時を指している。
今日はカメラマン(私の店のアルバイト大学生)と共にほとんど真っすぐ一本道の所々写真を撮りながら歩いてみた。
店を出てすぐに左折し伊勢佐木町4丁目に入る。
未だ商店は開店していない所が多い。
歩行者も少ない。それだけにとても空気がすがすがしい。
半年位前に出来たガスト。私も時々利用している。
美味しいというより便利だから。
未だシャッターの閉まっているスーパーユニーの前を通過する。
私は週1~2度お世話になる店。
望むべくはもっと鮮度の良い美味しい魚を置いてくれると嬉しいのだけど。
その斜め前はつい最近ビルが取り払われて空地になってしまった東映の封切館の映画館があった所。若い時、錦之介やひばりを観に行った事が今は懐かしいの一語。
そして日活会館。と云っても今は通じないだろう。ここも日活映画の封切館だった所。今は最新の娯楽を揃えたビルになってしまった。裕次郎や小林旭を思い出しやはり懐かしいの一語。今は私にはまったく用の無い場所になった。
右手にnewODEON。ここは松竹の封切館だった。私は一番回数多く通ったと思う。映画の放映時刻を調べ観たい映画一本だけ観てくるという時間の無かった時代にも何とかして映画館に通った。ここも今は私には全く無用の娯楽場になってしまった。
長者町通りとの交差点を渡り伊勢佐木町2丁目に入る。この時間店は未だ開いていない。人もほとんど通っていない。ウォーキングするにはとても好都合だけど。
一丁目に入る。去年十一月に閉店した松坂屋の跡の空ビル。
私がイセザキ書房を開店した昭和31年(1956年)には伊勢佐木町には4軒のデパートがあった。下から順番に無くなりの最後の砦だった松坂屋も消えてしまった。
悲しいとか淋しいとか云う感情を越えたものが胸の中いっぱいに拡がる。
これは、7~8年前の紅白に出たゆずのライブの時の写真を松坂屋跡の前面に貼ってある。あの頃は未だ伊勢崎町もそれなりに装い美しい街であったのにね・・・・。
吉田橋を渡る。関内駅はすぐ右手。根岸線の電車が見える。今思えば桜大線(桜木町⇔大船)が出来た頃、伊勢崎木町のたそがれは忍び寄っていたような気がする。
電車が通る。道路が出来る。橋が出来る。というように一面便利になった時必ずどこかに影が出来る事を私は長い経験で知っている。
ガードを潜ると右手にSHIDAX。ここも遊技場、私には全く縁のない場所だけど、その前を過ぎてゆく。
そして交差点を渡ると野村証券、尾上町支店。
その前を通り関内ホール前。今は工事中だったこの建物は何だかんだよく足を運ぶ場所である。
更に進むと老舗和食レストラン相生を右手に見る(私は和食派なので時々利用する)
左手、興和ビルの前を通過。
美しい建物だし最上階の店のステーキは美味しい。
神奈川の文化と歴史の博物館を左手に見る。
重厚な建物で私はとても好き。
国道ぞいに入り信号待ち。
横浜第二合同庁舎がそびえるように建っている。
そして萬国橋を渡る。思い出いっぱいの萬国橋。
私が未だうんと若かった頃はじめて本船へ本を車に積んで配達したのが、このセンターピアー(萬国橋埠頭)であった。「こんな若い娘がスクーターに乗って本を配達して来たよ」と本船の人にとても喜んでもらって私は有頂天になるほど嬉しかった。私にもあんな若い日があったんだ。
まるで夢のよう。
萬国橋の上から川を覗くと屋形船の群。
乗ってみたいなとふと思う。
そして、その向こうにみなとみらいの巨大なビルが美しい景色をかもし出している。横浜のこんな景色がとても嬉しい。
そしてやって来ましたNAVIOS YOKOHAMA。
この中のレストランで朝食バイキング。
これも楽しみの一つ。
カメラの写し方が悪くて夜みたいだけど今朝は客が多く賑わっていた。こんな画面になってしまったのも私の迷カメラマンのご愛嬌と思ってください。
余談ながらNOVISは宿泊も楽しい所。価格も安くみなとみらい側の部屋をとると美しい夜景が見られます。晴れていれば朝起きると富士山が見えてすごーく幸福感にひたれます。
ワールドポーターズ前を右に折れて、さあこれから私の大好きな場所へ向います。
途中、時節柄こんなポスターに出会った。
さぁ、来ました。私の一番好きな場所。
赤レンガ倉庫・・・・・・・。
100年近く前にレンガを積んで作られた建物らしいが今この建物のほどよい汚れ加減と全くピカピカした所の無い建物。
これが私の好きで好きでたまらない所以であろう。
ピカピカした建物は捨てるほどある中でこの建物の存在感は格別の風格です。
私はこんなに整理される前にも度々やってきて写真を写したのにその写真がどこかへ行ってしまって、とても残念。
空も海も美しい
ふり返れば逆光の中で落ち着いた趣き。
ベイブリッジも見えている。50年間に変化したこの海を私はいつも熱い感慨をもって眺めている。
そして大きな声で「好きだ!好きだ・・・!」と叫んでみる。
何が好きなの。
そう生きている事が好き。
小さな本屋がひとつ、又ひとつと消えてゆく中で私は決してグッドビジネスでは無いけれど世の中にまともな本屋が消えてしまってよいのだろか。といつもいつも自問自答しながら本好き、知的探究心のある人にとって遠くにある大書店とコンビニエンスストアの商品で気に入ってもらえるはずがない。
苦しみながら血も流しながら本屋らしい本屋を目指して私はひとつひとつ年令を重ねてゆくつもりだ。
さぁ、迷カメラマンと共に開店に間に合うように、歩を早めて帰路につく。
10時ちょっと過ぎ。
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