2009年1月20日火曜日

ふぐが青春の思い出を送って来た

下関の友人から大きなクール宅急便が届いた。
800×500×400位あっただろうか。ふぐセットと書いてあった。開けてみると綺麗なふぐ料理が出来上がっていた。大きな陶器の皿に薄く料理されたふぐのすき通るような白い身が半重ねになって丸く並べられ細い細いネギが一本絵のようにのせられ、ふぐの荒と骨は別の器に収められチリ用から揚用等にすぐ使えるように配慮されていた。あまりの見事さに暫くじっと眺めていた。
赤黒いマンジュウのような物、これは何だろうと思いつつお礼の電話を入れた時尋ねてみると「貴方、何にも知らないのね。モミジオロシよ。それを付けてネギで丸めて食べて。」
あぁ、そうだったのか。私もふぐは何度も食べているけれど、こんなに立派な芸術作品のようなのには初めて出会った。このふぐセットを眺めながら私の脳裏に次から次へと思い出が流れ始めた。

小学校6年生半ばから高校卒業するまで6年余(家も近かったので)学校の生き帰り、校内での行事、その他帰ってからはもう一人の友人と3人で誰かの家に集まり一緒に宿題、予習、復習等をした。
そして夜が更けても話題はつきず、時には泊まってしまう事も度々あった。

下関の友は卓球部、ダンス部でもう一人はダンス部でそして私は弁論部や生徒会長をしたりして思う存分活躍した。楽しかった。学校が私達を中心にして動いているような気分であった。
下関の友人が創作ダンス発表会で女郎蜘蛛を踊った時の未成熟ながら妖艶だった姿も思い出した。

時あたかも戦後すぐの事、外地から引き揚げて来た子、戦災を除けたり焼け出されたりして都会の子が沢山入っていた。私のこの二人の友も戦災組。又、教師も普通なら田舎の高校になど来ないような、かなりレベルの高い優秀な先生から学ぶことが出来た。
私は戦争のために父を比島で野垂れ死に(正式には戦病死)させてしまった事を悲しむ時にいつも自分に云っている。
こんな大きな犠牲を出したけど私の青春時代そのものはおかげで優秀な師や友に出会えさせたんだと自分の気持ちを引き立てている。
時代は未だアメリカの占領下だった。教科書も充分ではなく文房具や衣類も不足がちだったけど私達の六年間は人間成長の上で大きな収穫をもらったと思っている。

そして今は下関、名古屋、横浜と別れてしまったが何か事があると必ず連絡を取り合って60年前と同じように若やいだ気分をいただける。

私はこの立派なふぐを三日間かけて昼も夜も食べた。
すごーく美味しかった。こんなに細いネギは横浜では買えないがその香りと味の良さ、モミジオロシをつけてネギで巻きつけ特製の醤油を口へ運ぶとこの食材のマッチングの良さに驚いた。
又、ふぐの尾ヒレの日本酒との合性の良さもびっくり。
酒の味がぐーんと良くなるではないか。不思議だなぁ・・・・・・・・・・・。
下関の友は云う。
「3人一緒に食べたいね」と。

そのうち私も温泉行きを計画しているので近いうちに3人で一緒に会えると信じて75才になった今、10代の希望いっぱい楽しさいっぱいだった日を再現しようと考えている。

笑って笑って笑い転げたあの頃、何があんなに面白く楽しかったのだろう。老は淋しいけれど、こんな素晴らしい思い出を持っていることを幸と思いたい。

有難う、友よ、師よ、そして青春時代よ。


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