2009年10月31日土曜日

リクルート事件を覚えていられますか?

「リクルート事件・江副浩正の真実」
江副浩正/著

出版社名 中央公論新社
税込価格 1,575円


思えば、もう26年前の事になりました。
私は、それよりも4~5年位前?正月のテレビで内橋克人と江副浩正の新春対談をしていたのを観た記憶が鮮明に頭に残っています。亡夫も私もこういう番組は好きだったので、この時は二人で観たのを懐かしく思い出します。私の頭の中で内橋克人は前から知っていた人ですが、江副浩正というのは初めて見る人でした。「僕は一度も月給取りをした事はないんです。東大在学中に始めた新聞を東大卒業後もそのまま引き継いでやっておりますので。新聞と云っても主として、分かり易く云えば広告が中心ですね。」広告だけで新聞が出来る。1970年代の私には夢のような話でした・江副氏の話は今、思い出しても驚きの連続であったのです。内橋克人が私の同年代で好きな方でしたが、江副氏との対談を聞いていると色あせて見えるほど、先を読んでおられました。【この人はすごい人だ】きっと日本経済のトップに立って牽引して行く人だと、未だ若かった(今よりは)私は胸をワクワクさせながら話を聞きました。以来、江副浩正という人に注意を向けておりました。
住宅情報誌、求人誌等いろいろリクルートのものを売らせてもらいました。私の記憶では、全部競争相手を敗退させてしまったのを覚えています。

ところが、1983年末頃からリクルートコスモス株の譲渡の事が社会問題になり政界を巻き込んでマスコミが大々的に報じ始めました。

リクルート事件のはじまりです。

細かな事は割愛しますが、結果的に中曽根内閣の官房長官だった藤波考生は親分の身代わりのように有罪になって政界から消えてしまいました。竹下首相が退陣したり、元秘書が自殺したり、政界、財界を激震させた大きな事件になりました。

そういう間も私は江副氏は一体どこで何をしているのかを時として思い出す事がありました。もう表舞台には表れず検察と戦い懲役4年を求刑されていたんです。
人生の中で一番、油ののり切った働き盛りの何十年間を棒に振ってしまいました。

リクルートからは沢山の人材が財界で活躍しています・私は江副浩正の運が悪かったのかと思いますが、あれほど優秀な人材を、むざむざ事実上抹殺してしまった日本の社会を怨みます。
そして今回(リクルート事件・江副浩正の真実)として自ら一冊の本を出版されました。

読んでみて下さい。これは過去の話ではありません。今現在も政財界では何が起きているか分かりません。江副浩正という希有な人材を生かす事が出来なかった、過ぎ去った時間をうらめしく思いつつ、この文章を書き終えます。

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2009年10月24日土曜日

読書はあなたの財産です

先日こんな話を聞いた
「会議室のテーブルを”コ”の形に並べてください」
と上司が命じて「出来ました」と云うので行ってみると机が



こんな形に置かれていた。
これなんだ?と聞いたら”こ”の字形にとおっしゃったので、この字に並べましたと云う返事。大学を出たばかりの新卒男子だったらしいが上司は二の句が出なかった、という事です。
昔から形としてコの字形というのは強度があるので様々な所で使われている極々普通の言葉である。又、ある店で蛍光灯の取替えを頼んだら「やった事ないのでどうしてよいか分かりません」と困った顔をしていたらしい。これも日常生活の中で普通の作業であると思うのに。
この二例にかかわらず、日本語の通じない若者が増えてきている事は現実として私も度々経験する。その度に、事細かく教える事にしているが、ふり返って私の20才代はどうだったか思い出してみる。私も知らない事ばかりで、ひとつひとつ夫に教わり知り合いに聞いて身につけて来たと思う。

しかし根本的に異なる事は今の若い人達はとても羨ましい程素晴らしい感性は持っているが基本的なヨミ カキ ソロバンが劣っている。
特に本を読んでいない。本を読めば言葉を覚える、文字の意味を知る、それが何年か後に非常に役に立つ。又、困った時右せんか左せんかと迷った時の判断をする時に必ず役に立つ。
しかも読書は20代30代が一番血となり肉となる要素が強い。
感動が違う、感激の度合いが異なる。
人生の幸不幸はお金や財産で計ってはいけません。今、政治は何かと云うとお金を出すという事をテーマにすれけれど、生きるか死ぬかという程の貧困でない限り己の力で立ち上がらねばならない。立ち上がれる力をつける政策をもっともっと出してほしい戦後の何もなかった時に(私は未だ子供だったけど)に日本人は芋つるを煮て食べたりお腹をすかしながらも頑張って来たのです。日本人は60年間の間に高度成長とか、みな中流階級とか云って本来持っている強い精神を失ってしまいました。

今からでも遅くありません。
本を読んで下さい。そうすれば自分自身を客観視できる力を養う事ができます。そして日本人であって良かったと心の底から思えるように必ずなります。日本の素晴らしい文化をきちんと後世に伝えてゆきましょう。それには今からすぐ貴方が本を読んでくれる事です。

私共イセザキ書房は配達もいたします。
ネットでの注文も引き受けます。
私はもう76才、後何年働ける時間が残っているか分かりませんが力の限りを尽くして「本読み人」を一人でも多く読んでいただける人をふやす事に全力を注ぎます。私も頑張ります。皆さんも本を読んで下さい。

私が今月読んだ本を参考までに並べてみました。
少し偏見がありますがあしからず。
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「悩む力」
集英社新書
姜尚中/著
出版社名 集英社
税込価格 714円













「坂の上の雲」と日本人
関川夏央/著
出版社名 文芸春秋
税込価格 610円













「暮らしのヒント集」
暮しの手帖編集部/著
出版社名 暮しの手帖社
税込価格 1,260円













「風の男白洲次郎」
新潮文庫
青柳恵介/著
出版社名 新潮社
税込価格 420円













「容疑者Xの献身」
東野圭吾/著
出版社名 文芸春秋
税込価格 660円














「化粧する脳」
茂木健一郎/著
出版社名 集英社
税込価格 714円














「日本を貶めた
10人の売国政治家」
小林よしのり/編
出版社名 幻冬舎
税込価格 798円













しがみつかない生き方 
「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール
香山リカ/著
出版社名 幻冬舎
税込価格 777円













竹内流の「書く、話す」知的アウトプット術 
プロフェッショナルは、こうやっている!
竹内薫/著
出版社名 実務教育出版
税込価格 1,575円













日本はなぜ貧しい人が多いのか
「意外な事実」の経済学
原田泰/著
出版社名 新潮社
税込価格 1,260円













「辺境を歩いた人々」
宮本常一/著
出版社名 河出書房新社
税込価格 1,890円













「新忘れられた日本人」
佐野真一/著
出版社名 毎日新聞社
税込価格 1,575円


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2009年10月17日土曜日

紙芝居は読書の原点

皆さん一ヶ月に何冊くらい本をお読みになりますか?文化庁の調査等によれば16才以上の人で46%位の人は1冊も読んでいない、1~2冊読む人は36%位。つまり8割位の人は先ず本を読むという事に関心が薄いという事が分かります。昔からヨミ・カキ・ソロバンは普通の人が最低必要とする生活手段だったのですが、現代は様々な便利なツールが出来ているので、それを使えば生活上不便はない時代になりました。

デイズレクシアという言葉を御存知ですか?
知的能力及び一般的な脳内プロセスに特に異常が無いにも関わらず、書かれた文字を読めない、読めても意味が分からない又、意図した言葉を正確に文字に表す事が出来なくなるという人間がいるのを御存知ですか?
活字を一字一字拾いながら、情景を頭の中で想像しながら、本を読むという喜び、更に自分の思いを文字で表現するという楽しさは人間に与えられた至福のものではないでしょうか?

私は50年以上本屋という仕事に携わって来ましたがこの商売は本当に儲からない仕事である事がよく分かりました。でも、何とか続けてこれたのは金銭以上の幸があったからだと思います。それは一にも二にも読書する喜びをお客様に買っていただけた私の生き甲斐が支えてくれた事だったのです。

私は一人でも多くの人に一冊でも多くの本を読んでいただきたいというポリシーで生きております。更に次代を荷う子供達に本になじんで欲しい、本を読む喜びを知ってほしいという心情でいっぱいです。

私は考えました。まだ、文字も読めない小さな子供達、文字を覚え始めた子供達にどうすれば本になじんでもらえるかと一生懸命考えました。その結果思いついたのが紙芝居でした。紙芝居は実に単純な道具ですが、これを知る聞く事によって昔話や色々なお話を知る事によって子供の心の中に夢や希望が生まれてくる事が分かりました。

そして絵本を読む喜びから児童書の物語へつながり、やがて小説や実用書、経済書、その他様々な本を読む事に成長する事を知りました。読書の原点は紙芝居です。昔、自転車にのせて紙芝居屋さんがアメを売りながら演じていた時代を知ってる方がいらっしゃると思いますがあれは人間成長の原点だったのですね。政府は高校まで無料にするマニフェストに入れておりますが同時にその内容も充実させてほしいと思います。世の中、お金だけで割り切ったら恐ろしい世の中になってしまいます。もう半ばなりかかっております。これを止めるのはやっぱり読書です。

イセザキ書房では読書の原点を紙芝居に力をいれております。紙芝居の頁をクリックしてみて下さい。新しいものも、どんどんお知らせいたします。

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2009年10月10日土曜日

私のヨガ体験

私は30代後半から40代にかけて頭痛に悩ませられた。頭痛薬を飲んでも治らない。熱がある訳でもない。強いて云えば身心共に疲れた時と何かを行う前の緊張した時に頭が痛くなった。医者に相談してもはっきりした原因も分らず唯、薬で紛らわせていた。

そんな時、美容院の先生が「それは佐藤さん、ヨガに行きなさい」というアドバイスを貰ってYMCA横浜中央のヨガ教室へ通い始めた。北所先生というインドで研究をして来られたという30代位の体のしなやかな男の先生とその助手に女の先生がついていた。思えばそれから私は25年間(途中一ヶ月位は時々休んだが)ずーっと今も続けている。


その間先生も二回位交替して今は女盛りバリバリの体のよく動く先生になった。ヨガ教室も沢山あるけれど私は習い事の類は一人でやってるような所でなく、ある程度の組織とかあってシステムで動いている所を選ぶ事にしている。その方が安定していて安心だから。最初のうちは足も開かず手も足も指も思うように動かない。先輩の人達のスイスイ体を動かしているのを見て私は出来るかしらと不安もあったが先生が「そう、それで良いですよ。もう一度、もう一度」と同じ事を繰り返されながら「うまくなったね」とか云う言葉にのせられて皆に遅れながらも体を伸ばし、折り曲げていた。
「人間は通常の作業では同じ所しか使わない。いくら仕事してもある程度きまった所の筋肉しか使っていない。通常使わない筋肉を伸ばしたり曲げたりする事によって血液の巡りがよくなるんですよ」と云われた。通常の生活では床の上に両足をひろげ両手を左右に伸ばし胸を床につけるような動作は先ず考えられない。


でも開脚はとても体に効くし股関節が丈夫になる事を体験した。
もうひとつは呼吸法。あお向けに寝て腹式呼吸を10回位続けると気持ちがスッキリする。腹に空気を入れ、それをしっかり吐き出す。息をしっかり出す(毒気を吐き出す)そして大きく空気を吸い込む。これも、とても気持ちが良くなる。最初2~3ヶ月はドキマギしたがヨガ用のタイツを身につけ週1回は教室で、家では毎晩風呂上りに習った事を30分位、床の上にマットを敷き体を動かす事にしている。
半年もしないうちに頭痛の事を忘れた。以来私は76才の現在まで頭痛から無縁になった。風邪を引いても咳や鼻水が出ても頭が痛くなる事はほとんどない。


唯、昨年暮、腰部脊椎菅狭窄症の手術の為一ヶ月入院し退院後、約半年休んだら体はとてもかたくなってしまい得意芸だった開脚も45度位しか開かなくなった。これを元に戻すには多分一年近くかかるだろうと思っている。1日休むと3日バックする、1週間休むと3週間バックする。これは私の体験から得たデータである。絵画や書道を習うように○○習ったから腕があがったというものとは異なり動かす事を止めたら三年位後戻りするのが人間だという事を教えられた。

私の教室の写真を参考までに入れさせていただいた。
人間は何でもよいから広い意味のスポーツを続ける事が快適にいきるための要領だと思う。


ヨガの本も、たくさん出ています。
興味があったらぜひ読んでみて下さい。
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「最速!やさしいダイエット・ヨガ 
1日10分×21日、完全プログラム」
DVDbook
深堀真由美/著

出版社名 大和書房
出版年月 2009年6月
税込価格 1,260円
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「おうちヨガ SHIHO meets YOGA」
DVD&BOOK
SHIHO/〔著〕

出版社名 C.A.T.Inc.
出版年月 2008年7月
税込価格 2,100円
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「高津文美子の美顔ヨガ 
1日3分の自力整形で、なりたい顔になる!」
高津文美子/著

出版社名 主婦の友社
出版年月 2009年11月
税込価格 1,680円
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2009年10月3日土曜日

私のささやかな書店としての生きて来たこと

読売新聞(関東版)のコラム「しあわせ 小箱」の連載5回が無事終りました。恥ずかしいような、それでも懐かしい気持ちいっぽいの記事になっておりました。
小さいながらこんな本屋も頑張って生きているという事をお読みいただければ私にとってこの上なき幸です。何卒イセザキ書房をお願いします。
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しあわせ 小箱 海へ送る本※1
洋上のお客様に便り

イセザキ書房は、横浜市中区の老舗の本屋。「あなたの知ってる♪」の歌詞 で始まる「イセザキ町ブルース」の街にある。構えは大きくないが、店を開いて半世紀以上になる。読書が好きな人には書店経営はあこがれの仕事だけど、 その毎日は目が回るほど忙しい。書棚の整理に客の案内、新刊書の紹介、発注と返品。シャッターを下ろした後は、こつこつと売上を計算する。「一日があっと いうまにすぎていきます。」そう話す店主の佐藤智子さん(76)が多忙の中にも大切にするのは、お客に出す手紙だ。「空の色、風のささやきが秋の深まりを 感じさせます。イセザキ書房の本をお買い上げくださいまして感謝しております。」日に4、5通。季節の移ろいを青いインクで記していくと、お気に入り の青空柄の便箋がすぐになくなる。売り場の奥。薄暗い3畳ほどのスペースに小さな机があり、そこでせっせと書く。四季や風景を織り込むのは母国に思いをは せてほしいから。あて先は、はるかかなたの海を旅する船乗りたちだという。
近所のおじさんやおばさん、予備校生のお兄さん。お得意さんは数え切れないが、同じくらい大切にしてきたのが洋上のお客様。店の50年以上の歩みは世界の海へ本を送る営みでもあった。港ヨコハマにこんな本屋さんがあるのを、あなたは知ってた?
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しあわせ 小箱 海へおくる本※2
本棚載せ港めぐり

横浜市中区のイセザキ書房が、船乗りの相手の仕事を始めたのは1958年 頃という。店主の佐藤智子さん(76)にはセピア色の思い出がある。伊勢佐木町かいわいは当時、横浜随一の繁華街。大きな船が寄航するたび、たくましく 真っ黒に日焼けした船乗りたちが街にぶらついていた。店にひょいと顔を出して本をまとめ買いする姿も。ひとたび日本を離れると何百日も帰れない。長い航海 に備えて好きな本を手に入れていくのだ。亡き夫の禎志さんがそこに目をつけた。「それなら本を船まで運んでいこう」。こうして佐藤さんの店は、海を行く船 に商品を届けるシップチャンドラー(船舶納入業)となった。
トラックをワゴン車のように改造し、本棚を載せて港へ。「港の本屋さん」は大当たり で、その後、水色に塗られた車は9台に増え、横須賀や川崎、千葉など東京湾の港を駆け巡る。屋根の上には「イセザキ書房」とペンキで描いた。船のブリッジ からすぐに見つけてもらうためだ。「南極に向う捕鯨船、北洋のサケマス漁船・・・・・・・・七つの海を渡る船のお客さんは、いつも心待ちにしてくださいま した。」佐藤さんはその頃がとても懐かしい。が、80年代を過ぎてからは物流の流れが大きく変わり、港に立ち寄る船が少なくなった。お得意様はまだたくさ んいるのに・・・・・・・・・さてどうしたものかしら。
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しあわせ 小箱 海へおくる本※3
世界の港に先回り

そうだ、港に本を送ればいいんだ!横浜市中区で本屋を営む佐藤さん夫妻 は、はたとひらめいたアイディアにうなずきあった。1980年代以降、海の物流が様変わりし、日本に寄船する外国航路の船がめっきり減った。船が来ないな ら、海外の寄港地に本を届ければいいのでは・・・・智子さん(76)らはさっそく実行に移す。船乗りたちからの注文を取り次いでもらうように船会社などと 交渉。七つの海の港々に航空便で書籍を先回りして送り、船員さんたちが寄港地で受け取る仕組みを作った。船の上は娯楽が少ない。長旅では文字や写真は慰め になるのだろう。船員達から次々にシンガポール、韓国、釜山、台湾・基隆・それに原油プラントがひしめく中東の湾岸諸国。宛先として指定される港は様々だ。
送 るのは小説や雑誌。各国の地図。調理師からは料理の本を頼まれることもある。「ん?これはちょっと難しいかも」。ダンボール箱に本を詰めている時、ふと手 が止まる。グラビアが巻頭を飾る週刊誌などは露出がそれほど高くなくても、規制の厳しい国では税関ではねられる可能性があるためだ。
楽しみに待ってくれるお客さんに、どうか無事で届きますように・・・・。日本の文化をいっぱいに詰めたコ小包が横浜から世界の港に旅立っていく。
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しあわせ 小箱 海へおくる本※4
これが夫婦なの?

横浜市中区のイセザキ書房店主、佐藤智子さん(76)のお気に入りの場所 は、お店近くのコーヒーショップ。2階の窓際の席で、伊勢佐木町の並木の緑を眺めて一息つく。思い出すのはこの街に引っ越してきた頃の夫、禎志さんの若 かりし日の姿だ。表通りから少し横道に入った今の場所に店を移す前、イセザキ書房はこの窓から見渡せる辺りにあった。横須賀で営んでいた書店が手狭にな り、20坪ほどの店を開いたのだった。禎志さんとは故郷の香川で出会った。「私の体は99%だんなのもの」と佐藤さんは言うが、そう色っぽい話ではない。 とにかく厳しい人で甘えを許さない。仕事にもたつき、手が飛んできた事も一度や二度ではない。夫婦というより、先輩後輩といった方がふさわしいかも。仕事 以外も同じ。家庭のこと、社会のつきあい方、何でもかんでも口うるさく、徹底的に叩き込もうとする。「たまにはデートだ」と逗子の海に連れて行かれた時に はあぜんとした。「きみはボートをこぐ練習をしなさい」と行き交う波の上でオールをもたされた。
これが夫婦なの?と愚痴がこぼれることもあったが、夫が17年前に世を去ると、大きな喪失感に襲われた。仏前でうなだれていた時、夫の言葉が聞こえてきた。「きみは大丈夫。生きていくためのすべてを僕からまなんだのだから」
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しあわせ 小箱 海へおくる本※5
読み人たちの港

横浜市中区のイセザキ書房が取引する船は100隻以上。店主佐藤智子さん (76)が船員たちを送る本に手紙を添えるようになったのは、ここ数年のことという。インターネットもメールもある時代に手書きの手紙が寄港地に届くのは 格別だと、なじみの船乗りが言ってくれた。最初はお得意様への感謝の気持ちをしたためていたが最近、大切な事に気づいた。「私の残る時間のすべてをかけて 「本読み人」を一人でも多く増やしたい。一冊でも多くの本を読んでもらいたい」。ことあるごとにそう書いている。活字の一つ一つを追いかける事が血となり 肉となって素晴らしい暮らしと社会を作る。それが亡き夫の信念だった。イセザキ書房は紙芝居の品揃え多数。子供達に書物を親しみ、未来の「本読み人」に 育ってもらいたいからだ。読書は人生を豊かにする。この仕事を頑張って続けていこうと思う。本屋は広大な活字の海へ、皆さんを送り出す港だから。(了)  文・西島太郎
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読売新聞9月28日~10月2日に掲載されました。
ありがとうございます。
読売新聞HP

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