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どの頁にもふるさとの景色がある。かやぶき屋根、小川の横にある細い道、小さな橋がかかっている。電柱がひょろひょろ立っている。お寺の鬼瓦もそっくりに見える。瓦屋根の低い2階建ての土塀、そして格子戸。今にもガラガラと開いて祖母が出て来そう。家の周りに石が積み上げられ、蛸壺が沢山干してある風景。海育ちの私の胸にぐんとくる。浜にあげた小さな漁師の船、艪を使わずボンボン蒸気が乗っている。この頃は漁業も少しづつ機械化されはじめた頃だった。瓦屋根の並んだ曲がりくねった道を自転車で走っている男の人。こんな風景度々出会った自転車の風景があちこちに出てくる。そうだ、みんな自転車に乗って出かけたものだ。それから、大八車、さすがに車輪はタイヤだけど物を乗せて引っぱる姿は変らない。蓮池の向こうに見える家。お風呂を沸かせる煙突が懐かしい。みんな木で物を沸かしたんだ。どの頁もみんな私の子供の時の景色ばかり。
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丁度この頃、昭和50年代からは若者は皆、都会へ出て来始めた。今、古希を越えてこの画集を観るとすでに若者の姿がほとんど見当たらない。今、気がついた。それにしても日本国中こんなにもよく似た風景なのかと思いつつ90年以上経っている今頁をめくっている。白い倉が沢山出てくる。川が流れ小さな橋がほどよい間隔でかかっている。
著者は「集落風景が書きたかった、集落には表情があり集団としても語りかけがある。それは徐々に押し流されようとする変化に対して精一杯ふみ止まって抵抗しているという哀れさがあるのです。」と語っている。昭和51年の事です。
1976年30年以上前に描かれたこの風景は多分もうほとんど無くなっていると思います。里山もなくなった。景色は情感を育てます。美しい景色は美しい心を育みます。便利第一主義、それを進化と云うべきか、生活水準の向上と云うべきか今の私は迷ってしまう。
今私は小学館の日本の歴史の中の(鎖国という外交)を読み始めているが著者はロナルド・トビというアメリカ人なのに。日本人の私の全く知らない事が書かれている新しい発見の喜びを味わっている。
政治家はすぐに(改革)こそ国民の為だと論ずるが私はこの「静かな静かな旅」という40年も前に更にその前の事を描いた絵に、えもいわれぬ幸を感じている。里山の美しさ、懐かしさ、世界的な変化の中で日本だけが取り残さる事は出来ないが私達は古き良き時代を覚えておくべきではないだろうか。そして残さねばならない事もある。人間の心が失われてゆくのが恐ろしい。
「静かな静かな旅」を開いて眺めながら私達はテレビやマスコミにおどらせすぎているように思う。半世紀近く前の日本の風景の和やかさ、美しさ、優しさ。今この時代に痛切に感じる。例えばなぜすべてのテレビをデジタル化してしまわねばならないのか。出てきた古いテレビはどこへどう処分するのか。こういう事の起こる度に政治の裏の影を思わずにはいられない。古き良き上に新しいものを追加するべきだと思う。今大勢の自民党総裁を目指している人達はこういう事が分かっているだろうか。
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便利さばかり追求していると人間はロボット以下になってしまう。大事な事は何千年も積み重ねてきた日本の文化をもっともっと深く洞察し、その上に平成に生きる私達は更によき歴史を一つ一つ積み重ねてゆくべきではないだろうか。全巻著者の異なる小学館発行の「日本の歴史」はそういう面からもとても面白くて、頭の啓発に役立つと私は思っている。
財政は重要。官僚も減らすべきだと思う。しかし、それを云うなら衆議院・参議院・両議員の数を先ず減らすべきではないか。自分の事は棚上げにしては物事は前進しない。静かな静かな旅の時代はつい50年前の事になった。もっともっと私達は心を大切にしようではありませんか。
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参考書籍・画像
画文集「静かな静かな風景」
渡辺瑛/著
出版社名 東京新聞出版局
出版年月 1976年
税込価格 3,990円
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