2009年6月13日土曜日

世の中の進化は人間を幸にするのだろうか

宮本常一という方をご存知でしょうか?
(1907年山口県大島郡家室西方村に生る)
(1981年(昭和56年)74才で没す)
宮本常一が撮った昭和の情景(上)
宮本常一が撮った昭和の情景(下)
¥2800+税
毎日新聞社

 


画像もこちらの本からお借りしました。

宮本常一は日本の主に辺境の地の写真を10万枚以上撮った人である。
上巻は昭和30年以降の写真が主なので30年代の人々がどんな生活をしていたか、どんな環境の中で生きていたかという事が実感として伝わってくる。
下巻になると昭和40年代、50年代に移っている。



私は昭和31年に書店を開き以後、時代に翻弄されながら生きて来たので、この写真を一枚一枚めくってゆくと歴史の本を読むよりもずーっと日本の庶民の歴史が理解できる。
表面に出てくる日本の歴史は政治中心。そして大企業中心の経済が主役である。
しかし、宮本常一の撮った昭和の情景は東京、表参道や赤坂でも庶民が中心の写真ばかりである。そして底辺でしっかりと日本を支えているのは内閣でもなければ有名企業でもなく、この写真に出てくるような名も無い庶民であるという事がしっかり伝わってくる本である。
宮本常一の著書に「忘れられた日本人」とういう有名な本があるが、彼はやはり昭和を代表とする旅人だったと今、思っている。
又、彼の父も偉大である。
学校を出ている訳でもないが人が生きるという事はどういう事かという事を息子にしっかり教えている



①汽車へ乗ったら窓からよく見よ。田や畑に何が植えられているか、育ちがよいか悪いか村の家の大きいか小さいか、屋根瓦か草葺か、そういうこともよく見る事だ。駅へついたら人の乗りおりに注意せよ、そしてどういう服装をしているか気をつけよ。また駅の荷置場にどういう荷がおかれているかよく見よ。そういう事でその土地が富んでいるか貧しいか、よく働いているかそうでないところかよく分かる。

②新しくたずねていった所は必ず高い所へ上って目立つものを見よ。目を引いたものがあったら必ず行ってみよ。


③金があったら、その土地の名物や料理は食べておけ。


④時間がある限り歩け

⑤金というものは儲けるのはそんな難しくない。しかし使うのは難しい。それだけは忘れぬように。

⑥私はお前になにもしてやれない。だからお前には何も注文しない。好きなようにやってくれ。しかし身体だけは気をつけろよ。30才すぎたら親のあることを思い出せ。

⑦困ったり病気になったら、故郷へ帰って来い。親はいつでも待っている。

⑧これから先は子が親に親孝行する時代ではない。親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。


⑨自分でよいと思った事はやってみよ。それで失敗したからといって親は責めはしない。

⑩人の見のこしたものを見るようにせよ。その中にいつも大事なものがあるはずだ。あせる事はない。自分の選んだ道をしっかり歩いていくことだ。


宮本常一のまなざしより本文抜粋
¥3150
佐野真一/著


小学校も出ていない、ごく普通の人がこれだけの事を子供に伝えたというのはすごい事だと思う。
でも、少し前までは極く普通の人の中にこういうタイプの日本人は沢山ではないが居た事は私も知っている。

大体1980年頃までの写真だけど私は皆にこの写真集を見て頂きたい。
特に高級官僚と政治家に手にしてほしいと切望する。
この写真の中に出てくる笑顔を知ってほしい。
この写真の裏にひそんでいる庶民の苦渋の心中を分かってほしい。
悲しい事だけど私は今の政治家を全面的に信用する事が出来ない人間の一人である。
どんどん金を使って足りなくなったら色々な理由を作って消費税を上げればよいと考えているように思えて仕方がない。


消費税が5%から12%になったらどういう事になるか、総理以下の偉い方々は分かってらっしゃるのだろうか。この上下巻2冊の写真集をぜひ買って読んで下さい、観て下さい。
日本を支えているのは誰かと云う事がよく分かると思います。



世の中がどんなに便利になってもそれと人間の生きてゆく幸福とは比例しないと思う。
もっと人間の生きるという事の原点に立ちかえり上も下も誠実に生きてゆこうではありませんか。






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