2009年11月21日土曜日

古きよきものは新しさにまさる

私は海が好き。瀬戸内海の海辺で育ち、結婚してからも、いつも海がついてくれていた。昭和30年代の初め、横浜で書店を開業し又、海との関係は更に深まった。

何の目的も無く日本大通りを歩くのも好きだった。
横浜の中で一番好きな場所だった。

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ある時、ぐるぐる歩いていたら古い倉庫のようなボロボロの建物にたどり着き中に入ってみると何もない、うす暗くて気味の悪いような内部の一隅に人だかりがあったので足を向けてみると、このボロボロの建物の一隅に絵や写真を綺麗に飾ってある場所を見つけた。
人は2,3人居たけれど話も何もしておらず唯、絵や写真に見入っていた。よーく観察すると展覧会だった。こんな場所で入口にも何もPRらしきものもなく不思議な思いを抱きながら何枚か写真を撮った。

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網の目のように張られた天井、壁も柱もボロボロ。でも私はこの古い古い建物に表現し難い魅力を感じはじめた。気味悪いと思っていた所に魅入られてしまった。私は金ピカの新築よりどちらかと云えば古色蒼然とした建物にいつも魅かれる。

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話は一寸それるが日本郵船の昔のビルも私は大好きだった。新しく建てかえられ古いビルは明治村へ移された岩崎弥太郎が金を惜しまず建てたというビルは当時としては最新式だったろうと思うけど階段のとり方等にとても不合理な所もいっぱいあったけどその不合理さが私は好きだった。心が落ち着ける雰囲気を持っていた。
新しくなったビルは(と、云っても、もう20年位前?)ガラスの塔というような感じがして、とても美しいビルだけど、廊下を歩くと靴が見えなくなりそうなふんわりとした絨毯敷きで、とても明るくて気持ちいい建物になったけど、昔のビルが懐かしく思われてたまらない。

私はそれからこのオンボロのビルに何度か通ったというより魅きよせられたと云うべきだと思う。時々、若い音楽家グループの演奏会もあった。でもほとんどの人はこの存在は知らなかったと思う。

平成何年だったか、もう10年前位のような気がするが、ワールドビジネスサテライト(12チャンネル)を見ようとチャンネルを回すと私の魅かれてやまなかったそのビルの前で小谷キャスターが挨拶している。
私はビックリした。
あまりにもスカッとしたビルになっていた。
「本日は横浜赤レンガ倉庫から放送いたします」
と云ってるではないか。たしか市長も同席していたように記憶している。
ウワァーあんなに綺麗に生まれ変わったんだと思うと嬉しくて嬉しくて翌日、早速早朝に赤レンガ倉庫へ歩いていった。胸をはずませながら。
その時、あの赤レンガがピカピカに磨かれていたらどうしようと、それがとても心配だった。

着いた。私の家から走るようにして歩いて30分。。
私はジーッと眺めた。このビルの再生した人のコンセプトの素晴らしさに感心した。私の大好きなレンガは全く変化させず昔のままの赤レンガに残っている。嬉しかった。これでなくっちゃと私は飛び上がる程、嬉しかった。

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この明治時代のレンガ倉庫の良さを充分残してピカピカした所が何もなく、しっとりと、そしてすっきりと。もう一度云う、とてもとても嬉しかった。
私はそれから毎週日曜日早朝ウォーキングで赤レンガ倉庫前を通り海際のサクの前までいき誰もいない早朝の海に向って「好きです、好きです、貴方が一番好きです!」と大声で叫んでみる。(誰もいない時だけ)

海の色は1日として同じ日はない。
今日の海は私を笑顔で迎えたなー。
今日の海は大分、怒っているな、何か悪い事したかしら。
今日の海はそっけないな。好きな人にそっぽ向かれたようだ

色も同じ色ではない。黒ずんだ海、真っ青な海、白っぽい海、時に黄金の光を放っている海。
海は私の心の中を見透かしているかの如く、その日その日の私の心の中を写し出している。

今では有名になってしまっていて、色々な催しをやっている日が多く、大声で叫ぶ事がほとんどできなくなってしまった。人間の命には限界があるけれど建物は100年以上でも生きる事が出来るんだ。苦しい時心がくさりそうな時、私はこの赤レンガ倉庫前に行ってみる。
そしてこの景色と海風で心を洗う事を楽しみにしている。
横浜の誇りというよりも私の心のより所として書き残しておきたかった。

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今週のお勧め☆

「横浜赤レンガ倉庫物語」
神奈川新聞社
1575円
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