2009年9月26日土曜日

商売とは人間の輪でありたい

私は精神的に充分大人になり切っていない時に商売の世界に飛び込んだ。夫25才、妻20才。世間的なならわしはほとんど無知の年令だった。歴史、英語、理科等は亡夫に教わったが一般的な冠婚葬祭の類は周りに知った人の全くいない世界でとまどう事ばかりだった。

そんな時、隣りの店のおばさん前の店の奥さんというように分からない所を私はどんどん教えて頂いた。亡夫は非常に合理的な知型の人間だったので一般の風習を無視する事が度々あって私は困ったのを今懐かしく思い出してる。

血のつながりがなくても、とても親切に様々な事を教えて頂いたのは商店街の中で共に店を経営していた他人ばかりだった。でも何も知らない私にはどれほど力強い味方だった事か。もう半分以上の人は亡くなり、その他の人も店頭に立っている人はほとんどいない。商店街と一口に云うけれど、素晴らしいコミュニティーだったと今思い出している。

先日、私はKデパートで素敵な歯ブラシを見つけた。私は歯だけは全部自分の歯でここまで来たので歯磨きは少し気を使っている。一本¥1000の歯ブラシだけど「六ヶ月位で交換して下さい。使い終ったら綺麗に洗って乾かして下さい。」という注意書きがあってので、これは良さそうだと思い買ってきて使ってみたら実に気持ちが良い。宣伝文句通り。Kデパートまで出かけるのが時間がなくて近くの大手ドラックストアに寄ってみた。誰でも名前を聞けばみんな知っている大手で今は売上競争に奔走している店である。私は現物を箱に入ったままにして見せて「これありませんか?」と尋ねた。「無い無い。それはKデパートって書いてあるじゃないか」と云ったままさっと奥へ引っ込んでしまった。
「とり寄せてもらえませんか?」と聞きたかったけど、この男子店員(30代位)のすごい剣幕にビックリして声が出なかった。有名で立派な会社の店である。店の構えも大きい。商品も豊富である。客も入っているが皆さん夫々自分で買う物を探しているらしく思えた。

私も商人だから様々な客に50年以上出会ってきた。お客様というものは買ってくれる、くれないよりも店に入って来てくれるだけで、声をかけてくれるだけで、声が無くても目が何かを探している様子だけで私の店を選んでくれたという喜びで何をヘルプしてあげれば良いか考えすぐ行動する。
体が自動的にそう動いてしまう。

しかし現代の有名で立派な店でも、そこで働いているスタッフは私のような思いは無いようだ。暫くして再度行って名前は分からないけど「こういうタイプの店員さんいらっしゃいますか?」と問うてみると「あ、それなら○○君だ。先月止めましたよ」という返事が返ってきた。
多店化している経営者は皆、立派な考えを持ちそれなりに優れた人物だったと思う。しかし店が増えてゆくと総身に血がまわりかねるのだろうか。概して店頭にいるスタッフは色々な人がいるのが現状だ。商品が沢山ある、価格が安い・品質もそこそこだ・地のりも良いetc・・・
そういう事はもう普通になってしまった。
商店街の隣り同志でも心からの話は出来ない人が多くなってしまった。今日居ても明日居るかどうか分からない。私は同じ場所で半世紀に亙って商をして来たが時代の変化は恐ろしい。
みんな優しさを失くしてしまっている。
私は私の店だけは小さい力だけど、心暖まる店にして人間の優しさをサービスしたいと痛感する。私はここで一冊の本を思い出したので記しておきたい。

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「結局「仕組み」を作った人が勝っている」
Kobunsha Paperbacks
Business 007
荒浜一/著 高橋学/著

出版社名 光文社
税込価格 1,000円

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